環境変化に対応することがビジネスを継続できる唯一の道です。そして,環境変化に対応するためには,創業前に「自分」と「周り」 の状況を整理することが大切です。これを環境分析といいます。

■「思い込み」の罠

創業では準備不足のため失敗するケースが多く見受けられます。その大きな原因に,「思い込み」があげられます。「絶対に大丈夫」 「自分だけは上手くいく」など,創業において思い込みは危険です。「想い」を持つことは大切ですが,「想い」が「思い込み」になると, 周囲が見えず冷静な判断ができなくなります。創業後に,「こんなはずじゃなかった」と後悔しないために,ここで一度立ち止まって, 「本当に今の方向性でいいか」「準備は不足していないか」を環境分析で確認しましょう。

 

■ SWOT 分析で情報を整理する

SWOT と は,Strengths( 強 み ),Weaknesses( 弱 み ),Opportunities(機会),Threats(脅威)の頭文字をとったものです。 自分と自分の周りの状況を,強み,弱み,機会,脅威の4つに分けて整理するのが SWOT 分析です。SWOT 分析は,「外部環境と内部 環境」「プラス要因とマイナス要因」という 2 つの切り口の組み合せです。ここからは,イメージしやすいようアパレル小売店を開業 すると仮定して説明します。

■外部環境と内部環境

(1)外部環境

自分の事業を取り巻く世の中や身のまわりの環境で,自分のコントロール下にない要因のことです。外部環境は更に,マクロ環境と ミクロ環境に分けて考えます。

①マクロ環境
自分の努力ではコントロールできない大きな要因です。景気回復で消費者の購買意欲が上向いているのはマクロ環境です。マクロ環 境を整理する時のポイントとして,PEST 分析があげられます。4つの頭文字が表す要素,Politics(政治・法律),Economy(経済), Society(社会),Technology(技術)の視点で情報を整理すると,見落としを防げます。例えば,消費増税(→ P),物価上昇(→ E), 少子高齢化(→ S),衣類の新素材の誕生(→ T)などは,いずれもマクロ環境にあたります。

②ミクロ環境
自分の努力によってある程度コントロール可能な小さな要因です。出店計画地域に強力なライバル店がある。それ自体は変えられません。ただし,そのお店の品揃えを分析することで差別化を図り,品揃え面で直接的なライバル関係ではなくするなど,コントロールする策を講じることはできます。ミクロ環境の情報を整理する切り口に,ファイブ・フォース・モデルがあります。自社を取り巻く競争要因は,「業界内の競争者」「新規参入業者」「代替となる競争者」「売り手」「買い手」という 5 つの要因で考えられます。例えば,出店 計画地域のライバル店(→業界内),出店計画地域の新規出店店舗(→新規),貸衣装店(→洋服販売の代替),洋服問屋(→売り手),洋服の購買顧客(→買い手)などは,いずれもミクロ環境にあたります。

(2)内部環境

自分の事業の内側の要素で,自分のコントロール下にある要因です。あなたが洋服について豊富な知識を持っていることは,内部環境です。内部環境は,ヒト(経営者,従業員など),モノ(製品,商品,サービス,機械設備,備品など),カネ(自己資金,負債など),ノウハウ・情報(製造方法,営業方法など)に分けて整理します。例えば,洋服の接客が得意な従業員(→ヒト),取り扱うために仕入れた商品(→モノ),店舗を運営するために手元にある資金(→カネ),自分が有している洋服についての豊富な知識(→ノウハウ・情報)などは,いずれも内部環境にあたります。

■プラス要因とマイナス要因

更に,情報はプラス要因とマイナス要因に分けて考えます。例えば,外部環境として,景気が良い,創業しようとする業界が縮小傾向にある,と挙げたならば,前者はプラス要因,後者はマイナス要因です。一方,内部環境として人脈が多い,創業についてのノウハウが乏しいと挙げた

なら,これも前者はプラス要因,後者はマイナス要因です。
分類を進めると,ある要因について,プラスなのかマイナスなのか迷うことがあります。これは,捉え方によって異なります。例えば,出店しようと思った場所の近くに大型ファッション店ができることが分かりました。大型ファッション店の出店はどちらに当てはまるでしょうか。

そのお店の顧客に自店にも来てもらえると考えるならプラス要因,そのお店に自店の顧客を奪われると考えればマイナス要因です。迷った時に大切なことは,①信頼できる人の客観的な意見を聞いてみる,②更に詳しく情報を収集することです。外部環境のプラス要因は「機会」であり,マイナス要因は「脅威」です。一方,内部環境のプラス要因は「強み」であり,マイナス要因は「弱み」です。考え方は,図 1 で確認してみてください。

■強みはよく考える

ここで注意しなければならないのが,「強み」をよく考えること,すなわちその強みが,本当に自分の事業にとっての強みであるか, どの程度の強みであるかです。自分の事業にとって,本当の強みかどうかを判断するために,次の 4 つの質問で検討してみましょう。   「問 1:自分の事業にとって価値のある強みか」「問 2:希少性がある強みか」「問 3:模倣しにくい強みか」「問4:組織全体で活用している強みか」これらの質問に対して「YES」の数が多い強みほど,自分の事業にとって大事な強みといえます。一方,「NO」がついた質問が「YES」に変わるように努力すれば,強みを補完できます。

 

■進むべき方向性を考える

強み・弱み・機会・脅威が整理できたら,今度はそこから進むべき方向性を考えます。図 2 を見てください。4 つの項目の組み合わ せで,それぞれ方向性を考えることをクロス SWOT 分析といいます。ポイントは,外部環境である機会・脅威は変えられませんが, 内部環境である強みや弱みは伸ばしたり変えたりできるということです。例えば,高齢化によって 60 代の女性客が増えたけれど自店 の品揃えが 40 代向けで購買に繋がらない場合,外部環境の高齢化は変えられませんが,内部環境である品揃えを 60代向けに変えることで購買確率を高めることはできそうです。

したがって,変えられる「強み」を活かしたり,「弱み」を克服したりすることで「機会」 を捉える,①強み×機会,②弱み×機会の方向性を重視します。一方,変えられない「脅威」は回避します。このように,環境分析に よって自分と自分の周りの状況に適した方向性が見えてきます。いかがでしょうか。自分が描いていた方向性と違いがあるなら再考し, 不足している強みがあれば準備によって補完しましょう。

カテゴリー: 創業冊子ノウハウ

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