いざ事業を開始すると様々な経理事務が発生します。「経理は税 理士に任せてしまう予定です」という場合でも,自らの経営状況を 正しく把握しておくために最低限の経理事務は行っておくといいで しょう。帳簿作成や資料整理を予め行っておくと税理士の事務負担 が軽減されるため報酬額を低く抑えられる可能性がありますし,個 人事業主はキチンとした経理をしておくことで「青色申告事業者」 になることができ,税務上いろいろな優遇を受けることができます。

 

■事業用とプライベートとのお金の区別

経理事務を行うにあたり必要な書類は主に表1のとおりです。ま ずは事業用の預金口座を開設して,その口座を通して取引を行うよ うにします。開業後に資金繰りが上手くいかなくなる人の多くは「事 業用のお金とプライベートのお金を混同」しています。彼等が共通 して言うのは「売上はあがっているはずなのに,なぜかお金が残ら ない」です。事業とプライベートの線引ができないと,せっかくの 売上が浪費に変わってしまいます。経営者としての自覚を持ち,事 業用の資金は分けるように意識しましょう。

日々の事業活動では,預金口座を使わない現金払いが多くなりま す。その管理のためには小口現金帳が必要です。例えば「手許現金 が少なくなったら預金から 10 万円引き出す」という自主ルールを 作り,預金からの引き出しをプラス,日々の支払をマイナスとして 帳簿に入出金を記入していくことでお金の流れが把握できます。記 帳にあたっては勘定科目を決める必要があります。科目については 青色申告決算書の勘定科目などが参考になりますが,ここでは「ど の勘定科目を使うか」よりも「一度決めた勘定科目を継続して使う」 ことが大切です。継続性があればその勘定科目の毎月の推移を比較 することができます。

 

■売上・仕入等の管理

事業で最も重要な売上については売上帳を作成します。様式は自由ですが,飲食業や小売業などの接客業であれば日別・時間帯別の売上や来店客数なども分かるようにしておくと,後の分析に役立ちます。また,現金売上については,多少面倒であっても売上額をその都度預金口座に入金しておくことをお勧めします。

継続して発生する仕入れについては掛取引になる場合が多く,毎月の仕入金額の合計を銀行振込などで支払います。この場合,商品の仕入月と代金の支払月とにズレが生じるので,仕入帳を作成して仕入先ごとの費用と支払の管理を行う必要があります。
その他,従業員に給料を支払う場合は給与台帳を作成して従業員ごとに額面金額,社会保険料,源泉所得税などを管理します。この管理をしておかないと源泉所得税の納付時や源泉徴収票の作成時に多大な手間と労力がかかってしまいます。また,在庫が生じる事業であれば,在庫の棚卸帳などの作成も必要です。

 

■証ひょう書類の整理

事業活動を行っていくと,売上や仕入,経費の支払などを通じてさまざまな証ひょう書類が発生します。請求書や領収書,レシートなどの証ひょう書類は取引先とのトラブルがあった場合には証拠書類としての効力を持つので必ず貰うようにしましょう。また,支払の領収書やレシートなどがあればその分経費として認められ,税金の対象となる所得を低くすることができます。

証ひょう書類は月別に内容ごと・取引ごとに分けて時系列で保存しておくと便利です,取引を入力する場合や過去の取引を見返す場合などを想定して,自分の見やすい方法で保存しましょう。領収書が貰えない場合には,取引内容を帳簿に記載したり預金通帳にメモ書きしたりしておきます。

その他,開業時に行った内装費や設備投資代は減価償却資産と費用計上部分とに分ける必要があり,店舗や事務所を賃借している場合には契約時の金額を賃料部分と保証金部分とに分ける必要があるため,それぞれ見積書や契約書を保存・整理しておく必要があります。借入金がある場合には契約書と借入金の返済予定表が取引の入力に必要です。

 

■領収書は選別する

支出される諸費用のうち,事業上の経費として認められるものは 主に表 2 のとおりです。内容に応じて全額経費になるものと,事 業供用分だけ経費になるものがあります。これらの経費にかかる領 収書は保存の必要がありますが,逆にそれ以外の支出は領収書が あっても経費にはなりません。

事業者にありがちなのが「領収書が あれば何でも経費にできる」という誤った認識のもと,日々の食費 から事業と無関係の買い物まで,あらゆる領収書をため込んでしま うケースです。そうなると証ひょう書類の整理ができなくなり,正 常な利益も算出できません。事業に関係ない領収書は保存しておく 必要はありません。

 

■会計ソフトを使ってみる

経理にある程度慣れていれば,これまで説明してきた取引の入力を会計ソフトを使って行うこともできます。市販の会計ソフトは価格帯から付随機能までさまざまですが,開業当初は取引入力以外に次の機能がついていればよいでしょう。大抵のソフトにはこれらの機能はついています。

1 月次損益の推移が時系列で表示できるもの
2 勘定科目の細目(補助科目)を設定できるもの
3 データの MS-EXCEL 等への変換が可能なもの

入力した内容が表 3 のように月別・補助科目別に表示できれば 科目別の月別推移が一目でわかります。ちなみに勘定科目とは取引 の内容を同一種類の取引にまとめたカテゴリーをいい,補助科目は これを細分化したもです(例 勘定科目:水道光熱費,補助科目: ガス代,電気代など)。これにより売上・費用の把握や異常値の発見, それに対する対策の検討・実行までを迅速に行うことができ経営に 役立てることができます。

更にそれらの資料を MS-EXCEL などで 加工できれば,自分仕様の資料を作ることも可能です。 取引の入力は会計ソフトでもエクセルでも手書きでも構いませ ん。大切なのは「入力を溜めてしまわない」ことです。毎日でも週 1ペースでもいいので,自分のやりやすいペースで溜めずにコツコ ツ入力していきましょう。

経費

カテゴリー: 創業冊子ノウハウ

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